マルタからの報道によると、同国で16日、政治家の腐敗告発で知られ、租税回避地をめぐる「パナマ文書」報道に加わった女性の調査報道ジャーナリスト、ダフネ・カルアナガリチアさん(53)が車を運転中に爆弾が爆発、カルアナガリチアさんは即死した。
ムスカット首相は今回の事件を「野蛮な」行為と非難し、治安当局に対して、関与した者に裁きを受けさせるため、あらゆる手を尽くすよう指示した。
複数の目撃者によると、爆発は白昼、マルタ北部ビドニジャ(Bidnija)にあるカルーアナ・ガリジア氏の自宅近くで発生。爆発により車は原形をとどめないほど破壊され、同氏の体も近くの畑まで吹き飛ばされたという。
地元テレビ局によると、カルーアナ・ガリジア氏は今月、脅迫を受けていると警察に訴えていた。
殺害される数時間前に行ったブログへの投稿では、ムスカット首相の最側近であるキース・シェンブリ(Keith Schembri)首席補佐官を、政府の影響力を使って私腹を肥やしている「ペテン師」だと批判していた。
マルタではムスカット首相の妻、ミシェル・ムスカット(Michelle Muscat)氏がパナマの銀行に隠し口座を持っていたとの疑惑が浮上。この銀行口座についてカルーアナ・ガリジア氏は、アゼルバイジャンの銀行とつながりがある同国政権の親族からマルタでの銀行免許付与の見返りとして報酬を受け取るために使われていたと主張し、スキャンダルに発展していた。
シェンブリ首席補佐官とコンラッド・ミッツィ(Konrad Mizzi)官房長官は昨年、タックスヘイブン(租税回避地)を利用した節税実態を暴いた通称「パナマ文書(Panama Papers)」の流出により、パナマの法律事務所モサック・フォンセカ(Mossack Fonseca)を通じて設立されたペーパーカンパニーの所有者であることが発覚していた。しかし、首相は両氏を擁護してきた。
ムスカット首相は「我々の民主主義にとって暗い日となった」と述述た。
イタリア国内ではマフィアによるテロは頻繁で報道記者も慎重にならざるを得ないが、マルタにまで手が及んでいたのは、彼女の功績とその調査報道がどれほど脱税者に損害を与え、民主主義を力づけたか、はかり知れない。