アラン・チューリング死後の世界で
人工知能が人間の能力を超えたか、どうかを判定する試験ー
それはチューリング・テストと呼ばれています。コンピュータの生みの親アラン・チューリングの名前が冠されました。
映画ブレードランナー2049で、主人公がコンピュの眼(レンズ)に向かって、質問に答えているシーンが有名です。
ほとんど映画解説者を含め日本人は気づいてない様です😂
このシーンは、ハリソン・フォード主演の前作でも人間に化けたアンドロイドを探し出し個体を特定するシーンが異様で、この作品の精神世界が垣間見えます。
彼はケンブリッジ大学のキングス・カレッジに進学し、優秀な成績と論文を残します。その結果、卒業後も彼は特別研究員(フェロー)としてキングスカレッジに残ることになり、計算可能性理論やコンピューター科学の研究を行いました。
1939年に第二次世界大戦が始まると、彼はナチス・ドイツが使用していた暗号機エニグマの解読を任されます。そして、彼は暗号解読機「bombe」の開発に成功し、戦後には大英帝国勲章を授与されました。
アラン・チューリングが受賞した大英帝国勲章のナイト・グランドクロス星章
その後、1946年頃にアラン・チューリングはイギリス国立物理学研究所へ移ります。そこで彼は、イギリス初期のコンピューターである「ACE」を設計し、現代に続く情報化時代の基礎を形作りました。
1952年、40歳だったアラン・チューリングは19歳の青年アーノルド・マレーと出会い、恋人関係に至ります。しかし、当時のイギリスでは同性愛が違法とされており、2人は逮捕されてしまいました。
そして、1954年にはアラン・チューリングの死体が自宅で発見されました。彼の死因は青酸中毒による自殺であったことがわかっています。祖国のために偉大な功績を上げ、未来へつながる画期的な発明をした天才数学者の41年にわたる人生は静かに終わりを迎えました。
イギリスの50ポンド紙幣に採用された
2019年、イギリスの通貨であるスターリング・ポンドの新50ポンド紙幣(円換算約7500円)にアラン・チューリングの肖像画が採用されました。2021年6月23日より、アラン・チューリングの肖像画が裏面に描かれた紙幣の流通が始まります。
イングランド銀行のベイリー総裁によると、アラン・チューリングの功績を讃える目的で彼の肖像画が新紙幣に採用されたようです。このようにして、彼はアダム・スミスやチャールズ・ダーウィンらと肩を並べる偉人として改めて歴史に名を刻みました。
伝説となった Imitation Game
戦時に政府暗号学校が置かれていたブレッチリー・パークで撮影が行われた
2014年、アメリカ合衆国においてアラン・チューリングの人生を題材とした伝記映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」が制作されました。この作品は多くの批評家たちから高い評価を受けており、欧米だけでなく日本でも公開されています。
この作品はアラン・チューリングの功績を広く世間に知らしめることへ繋がりました。さらに、同性愛への理解についても大きな意味を持ち、LGBTの権利向上を目的に活動する団体ヒューマン・ライツ・キャンペーンによって映画の製作関係者が表彰を受けています。
実はアスペルガー症候群だった?
チューリングは自分の関心があることに対しては、熱意を持って取り組むがそれ以外は無関心。声は甲高く、話好きで機知に富み、学者ぶったところがあったといわれています。
髪は終始ぼさぼさであり、爪も伸び放題、容姿には無頓着でした。交友関係は少なく、アスペルガー症候群であったともいわれています。
Apple社のロゴはアラン・チューリングが自殺した時のリンゴをモチーフ?
誰もが知っている有名な企業であるアップル、そのロゴを見てみるとリンゴを一口かじったものとなっています。しかし初めはニュートンがリンゴの木に寄りかかっているところが描かれた絵がロゴとなっていました。
アップルのロゴの由来は・・・?
では現在のロゴになったのは、いつなのか?それはスティーブ・ジョブズがアップルに復帰してからです。誰もが見て分かるシンプルなものをと考えたジョブズは、リンゴがかじられたようなデザインをロゴにしました。これは、かじるという英語の「a bite」とコンピューターの情報単位である「byte」をかけたものです。
しかし、都市伝説としてアラン・チューリングが自殺した際に使用したリンゴをモチーフにしたと囁かれています。
チューリングテスト”の提唱
仲の良かった男の子を若い頃に亡くして以来、”機械は考えることができるのか?”ということに、チューリングは関心を持っていました。
そこで、被験者に、人、あるいは計算機とタイプライターで会話をさせ、相手が人か、計算機かを判断させるというゲームを発案し、実験を行っていました。
この時、被験者が自分が対話している相手が人か計算機か分からないのであれば、その計算機は”人工知能であると考えるべき”だというのがチューリングの主張です。
このテストは、現在の人工知能研究のベースともなっており、これを突破できる計算機システムの開発が行われています。
アラン・チューリングの才能
アラン・チューリング研究の第一人者である、ケンブリッジ大学卒業の数学者、アンドルー・ホッジス氏は、ある講演において、チューリングの才能を以下のように言い表しています。
「チューリングの特異な才能の特徴は、非常に抽象的でとらえどころのないように見える問題を、極めて具体的でシンプルな問題にしてしまうところだ。」
これは、チューリングの以下のような発見に見受けられます。
- 数学における「計算可能性」の難しい議論を、一本のテープの上を動き回る「マシン」の動きという具体的でイメージしやすい問題に置き換えてしまったこと。
- 「知能」というどうして良いかわからない問題を、「機械と人間の単純な問答」という簡単なゲームを設定することで、そこに知性の本質があることを示したこと。
また、彼は「本質的でないもの」を排除する性格を持ち合わせていた、とも言われています。
例えば、計算を行うときに、2進数を用いるか10進数を用いるかという議論が起こったときに「何進数であろうが、変換ができるのだから重要な問題ではない」とチューリングは主張し続けていたそうです。先述したエニグマ暗号解読装置”ボンベ”の設計も、「暗号から意味のある情報を抽出する」というものではなく、「可能性のない組み合わせを最短の作業で省く」という思想のもとで行っています。
つまり、「無意味なものを極力排除する」ことが、チューリングが一貫して継続し続けた手法だとも言えます。
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