プノンペンでアパートを経営する日本人。
カンボジアの首都プノンペンに日本人は何人もいます。現地妻と2人暮らし。スラム街の建物を購入し、アパートをオープンしましたが、その奥さんとも数年前から別居中という。
ひどく口数の少ない孤独な日本の老人。建物には小さな部屋が3つ。ひと部屋の家賃は35ドルなので、満室でも月1万円にしかならない。
実は、彼がもと日本のIT企業の先駆けの開発者だったSさん。
「カンボジア クメール娘」に収録するつもりで取材していたが、プノンペンで幸せに現地妻と暮らしているSさんの生活に波風がたたないよう、この章は未収録だっだ。
よわい70にして、節約のため建物には住まず、アパートの外にブルーシートで作った小さな小屋にひとり暮らし、蚊の群れと戦いながら日々、ノートに夏目漱石論を書き綴っている。
パスポートは数年前に行方知れず。もはや、己が日本人である証明すらない。そのまま映画化できそうな、ある意味、悟りの境地。好きでやってるんじゃないかと疑うほどですが、実際、彼らに帰国の意思はありません。
日本に居場所のないひとが、溶け込めてしまう国。それがカンボジアです。周りの人は不干渉。押し付けがましく生き方を強制したりしない。
実はプノンペンの物価は日本の地方都市と同じ水準。ここで日本人らしく生活しようとすれば10万円は最低いる。だが、庶民の給料は2万円。食品、衣料、電化製品などすべて生活の必需品はタイから輸入。輸送費が上乗せされ、そのぶんタイより割高。
それなのにプノンペンやシェムリアップ、シアヌークビルに日本人が住んでいるかというと、周りがみんな貧しいので、その惨めさが霧消する。バンコクやチェンマイには現地人で金持ちが多いため、底辺の生活は日本人にはこたえる。
現地の娘を嫁にもらったり、愛人にした日本人の行く末も描きたかったが、それは叶わなかった。
だが、こういった人たちを見ていると、人間やる気になれば何とかできるんだ、とトレンサップ河のびょうびょうとした川面を眺めてしまう。
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上記記事はこの本の抜粋です。R18作品に分類されています。
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