ReuterJapanNews’s Dialy

バンコク駐在記者。ヤンゴンからチン州ミンダットに転戦。国際NGOと連携して国軍の攻撃から逃れる難民を救おうと頑張っています。

アンヘレス 連載4 青春の儚さ アニー・グリンドリン17才

 

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 恋愛深煎り編5

青春の儚さと素晴らしさ

アニー・グリンドリン 17才

 

 最後に記者自身の体験をひとつ。

ジョイと行きの飛行機内で出会ったあと、マニラ市内で別れたわたしは、旅行代理店の前で、アニーという娘に出会った。

鼻のあたまに汗を浮かべる人なつっこい笑顔をかわいい娘で日本語が得意だった。

それで、彼女にいろんなところに連れて行ってもらうことになった。アンヘレスのような歓楽街ではないもっと、フィリピン文化を感じられるところを見たかった。それにフィリピンの猛々しい自然も見てみたかった。だが、ケゴヤンデオロなどはゲリラが出没するので、兵士のガードがなければ無理だといわれ、近場のパグサハン・フォール(滝)に遊びに行くことにした。

ガイドをしてくれたのがアニー・グリンドリン。年齢を聞くと18才だというが、数えなので、日本式では17才の高校2年になる。学校へは通ってないが、なぜかしら私が借りていたサンアントニオ通りのアパートの近くの一軒屋に家族親戚8人で暮らしていた。

いつも昼過ぎから一緒に行動するが、彼女はガイド料などいらないという。

「日本人にフィリピンのいいところを知ってもらえるだけで嬉しい」と健気にいう。

そのころ日系ホテルの前で日本人2世だと言い張る2人のフィリピン男が、用事を頼むたびにカネをくすねて行くのでうんざりしていた。

しかし、アニーは違った。何か詐欺や多額の請求などがかかってきそうになると、彼女は高校生なのに、果敢におとなのわたしを守ろうとして、相手に食ってかかるのだ。タガログ語なので何を言ってるのかはわからないが、相当、激しくやりあっている。

彼女のなかにある精神の姿が見えたような気がして、わたしはアニーを深く信頼するようになった。

30に手が届きそうな男が、守られても何も失うものはないが、アニーはなぜかいつもそうするのだった。

時どき、じっとわたしの目を見つめているが、これまで男は2人だけだと白状する。フィリピンではみな14-15才で処女を失うという。

「わたしはバージンじゃないから、心配はいらないよ」と時々、キスを迫ってくる。

だが、わたしは気がひけた。

年齢が問題だ。

フィリピンでは一人前の女でも日本では未青年であることには違いない。それで関係を深めることを諦めた。

だが、パグサハン・フォールで、船2隻にわたしと娘4人を乗せたボートを操る船頭は、ツアーの終わりに流れが激しかったので、もっと手当てをほしいと請求してきた。

パグサハンの特長は最初にバスがついたところから河を遡上するところにある。川を人力でのぼるのだ。パドルを漕ぐだけでは200キロ(ひと4人)が乗った船が河をのぼるはずはない。船頭たちは要所では脚で岩を蹴って船を進めた。こんな遡上の仕方を見たのははじめてだ。

船頭は疲れたら前と後ろが交代する。そして、乳酸がたまると、船のスピードを保ったまま、熱をもった頭を水に突っ込んでは冷やす。河の落差が大きくなるほど頭を水にくぐらせる頻度が多くなる。わたしはこの模様をカメラにおさめた。

レポートはベストスポーツという月刊誌にアジアの川旅として掲載された。

 

彼らの働きはたいしたものだ。

大きな金額ではなかったが、このあとにくる日本人ツアーのためにも出すつもりはなかった。しかし、洞窟の滝に打たれた娘たちは凍えていた。さすが、山奥は気温が下がっている。それに年頃の娘ばかり4人も引き連れてる日本人は彼らにしたら大金持ちなのだ。

船頭は英語がしゃべれない。当然、アニーが交渉役に入る。火花が飛ぶような激しいやりあいのあと、金額を半分に値引きさせた。そして、それをちゃんと全員で分けるように言いくるめたのだ。

日本人の17才の娘ではとてもできない。アニーは途中、自分のあたまを何度も手のひらの底で叩きながら、通訳を忍耐で続ける。通訳をしたことがあるのでわかるのだが、時間が長引くと2つの言語を聞いてしゃべる、その反対をやる。議論になると頭が熱を持ち始める。それに耐えて頭を叩いていた。

かれこれ20分が経過しそうになったときに、わたしは忍耐が切れそうになり、この馬鹿船頭の脚を蹴ればそれで交渉は終わるとわかっていたので、実力行使するつもりになった。

空手のローキックを入れられて、カネを請求しようなどと思う人間はいないからだ。

アニーは懸命に話をまとめようとする。

「喧嘩して勝っても、ここから逃げる間におんなの娘がつかまるから、手をださないで」。

アニーは必死にわたしの両腕を押し返そうとしたのだ。

結局、小額を上乗せして払い、彼女たち全員はちゃんと船頭が案内する宿でシャワーと着替えを済ませて、返りのバス停まで車で送ってもらった。

 

アニーとはマニラにいるあいだ、ずっと一緒に行動したが、互いを敬愛する情をもっていたと思う。

「どうして、あたしを抱いてくれない?」といわれたときにはさすが胸に突きささった。

「日本人だからできないんだ。きみが大人になるまで待つよ」。

「そんなあ、待つ必要なんかない! あたしはあちこち傷があるけど、心はきれいなまま」。

「どんな傷があるの?」とわたし。

「樹に登ったらそこから落ちて、塀から突き出てる槍に串刺しになった。ほら!」

 

観ると、腕の付け根におおきな抉れた穴のあと。

 

「まだ、あるよ。歯もたくさん折れた!」とアニー。

「うそだろー?」

「見る?」

そういって、口から前歯3本をはずして見せてくれる。

「うあーーーーー!」orz.

あまりのすごい怪我に言葉を失った。これでひるんだら男ではないと抱きしめそうになる。

が、いかん17才。

何とか踏みとどまった。

抱き寄せられるのを待っていたアニーは目頭にいっぱい涙をたたえ、家のある方向へ悲しそうに何かを振り切るように駆けだした。

 

このまま、もう会わない方がいいかも知れないと思い、4-5日、連絡を取らずにいた。

しかし、帰国の日が迫っていることを知っているアニーは、空港へ送りに行くからと言う。

空港の駐車場で力いっぱい抱きつく彼女の表情に、この娘の青春のはかなさとすばらしさを見せてくれたような気がした。

 

それから、3カ月後、日本にやってきたアニー。東北の温泉地からわたしの家に電話してきた。

 

「雪が降ってる。寒いよー」。

 

 

 

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上記記事はこの本の抜粋です。R18作品に分類されています。

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