クアラルンプール国際空港で殺害された金正男氏(上)、暗殺指令をだしていた北朝鮮労働党委員長の金正恩氏(下)
金正男氏が暗殺される
北朝鮮の金日総書記の長男で、現朝鮮労働党委員長の金正恩委員長の異母兄にあたる金正男(45才)が6日、マレーシアのクアラルンプール空港で殺害されたことが明らかになった。金正恩委員長が暗殺指令をだしていたことから、北朝鮮秘密工作員に殺害されたものとみられる。
複数の目撃者証言によると、工作員は2人とも女性で、空港の出発ロビーで近づいてきた2人に布で頭を覆われ、正男氏は体調不良に陥り、病院に搬送された後、死亡が確認された。目撃証言によると、「頭を覆った布には毒物が沁みこませてあった」というものと、「針で複数回、刺された」という2つの殺害方法が浮上している。どちらも目撃証言なので、殺害を完全に実行するために両方だっとみられる。工作員の女は現場からタクシーで逃走した。
『北朝鮮アセンディング-彼女たちの国境』で書いたように、金正恩氏は軍を指揮し常に動いてないと気が済まないという脅迫観念にとらわれており、日本の安部首相と米国のトランプ大統領との会談時にミサイルを発射、自らが世界の注目を浴びた。
ミサイル発射計画と同時に、北朝鮮の後継者レースで最有力だった長男の正男氏の殺害の機が熟したことから、暗殺を実行、北から韓国を通じて殺害をリークしたとみられる。
金正男氏は自身、暗殺される危険は感じていたようだが、マレーシアからマカオへ行く便に搭乗する途中で、工作員に捕まった。
中国はこれまで北朝鮮と中国のパイプ役だった張成沢氏(処刑された)を通じて中国国内やマカオで正男氏を保護してきた。暴走をやめない正恩委員長の後継者に、「正男氏を北朝鮮のリーダーに据える」という選択肢を、正恩氏が読み取り、阻止することが狙いだったようだ。
金正恩政権が発足した直後の2012年から「場所、手段を選ばず、正男氏を殺害せよ」との指令が出されていた。消息筋によると、中国に滞在する工作員に毒針が配布されたことも確認されたという。
金正男氏は1971年5月、金正日(ジョンイル)総書記の長男として、映画女優の成恵琳(ソン・ヘリム)氏との間に生まれた。金総書記の後継者として有力視されたが、2001年には、別人名義の旅券で日本に入国しようとし、成田空港で家族らと拘束され、強制退去措置となった。
後継者レースから脱落したが、金委員長の実母、高英姫(コ・ヨンヒ)氏を支持する勢力との暗闘が背景にあった。その後は、主に中国や東南アジアでビジネスに従事していた。金総書記の妹の金敬姫(ギョンヒ)氏とその夫の張成沢(チャン・ソンテク)氏が金正男氏を擁護してきたが、張氏が13年末に処刑され、後ろ盾を失った。
今回の国際世論が糾弾するなか、公然とミサイル発射し、北の後継者問題で正恩氏はみずからの殺害計画「キルスイッチ」を押すことになった。
北朝鮮は昨年秋からの米の収穫ができず、農村部で餓死者がでている。ひとつの都市で300人の餓死者がでていることから、数千人に及ぶ可能性がある。米国は人道支援の立場から救済を申し入れている。
北朝鮮アセンディングより
仮想敵国ゲームの真実
世界の目は、地中海を越えてイタリアの南端、スペイン、そして、ギリシャに詰めかける中東・北アフリカの難民に向いている。特に北アフリカのリビアから小型船で定員を100倍も上回る難民を積みこみ、地中海沿岸で船を沈め、逃げ帰る難民ブローカーの極めて残忍な脱出ビジネスに、世界は目を釘付けになった。だが、これと同じほど凄惨な事件は、アジアでずっと続いているのだ。中朝国境の吉林省の現場から。
中国、ロシア、北朝鮮の入り組んだ国境を舞台に脱出劇は繰り返されいた。延辺朝鮮族自治州、3国の国境にあるこのちいさな州には約190万人の朝鮮族が暮らしている。
ここに北朝鮮からの難民が越境して逃れてきたのは1990年代の中ごろからだ。実は1996-1998年、北朝鮮は未曾有の大飢饉におちいり、国中の人が食べ物を求めて、国内の闇市場をさまよう事態におちいっていた。
「ひとがばたばたと死んでいった。市場に辿りついたら力尽き、そのまま死ぬひともいた。そして、何よりも配給だけを頼りに生きていたひとたちが、家のなかで全員餓死していた」。その数は200万人とも300万人とも言われる。その後の調査では推定350万人にのぼった。
北朝鮮の当時の事情を振り返り、今は韓国で生活している脱北者は、その怒りの矛先を金体制に向ける。
ここは中国、辺境の東北農村地帯。
北朝鮮から凍える河を越えて脱出する北朝鮮のひとたちが潜むのは、190万人の朝鮮族が住む「延辺朝鮮族自治州」。首都平壌(ぴょんやん)の人口は200万人とされるから、かなりの人数である。だが、彼らは中国籍でも朝鮮語が通じ、違いは”方言”程度なのだ。
この朝鮮族自治州に入るには、豆満河を渡ればそこは中華人民共和国だ。朝鮮族の小さな農家の集落がいくつも点在する。冬はマイナス30度(真夏は40°その差70°)にもなる山あいの農家。食べることにはこと欠かないが、中国の平均的な家庭に比べ、収入は低く、どの農家も後継ぎの長男に嫁になろうという中国人女性はいない。そのため、農家は20、30、40才の独身男と両親の3人で農業を営んでいるという状況だ。
そこに現われたのが、冬の凍れる川を越えて逃げてきた、北の女性である。このルートを使って脱北に成功するには、ある共通した戦術がある。
最初に若い女性を送り込む。そして、定着できたら家族の何人かを呼び寄せ、そこからさらに別の隠れ家へ移し、北京にある韓国領事館やUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)にかけ込む。
さらにチベットの国境を越えるルートも存在する。だが、現実はそう簡単ではない。韓国大使館では実際には追い返される。週に数家族が古い情報をもとに韓国大使館にかけこむが、大使館側も軍のハイランキング者など情報価値のある人間しか認定しない。多くの家族が門前払いされている。
北の女性は美人が多いと言われる。切れ長の目、キメ細かな肌。日本人に比べ歯並びがきれいだ。農家にとつぐ嫁日照りに悩む、男たちはほとんどが一目ぼれで結婚を決意したという。
なんと言っても、逃げてきたのは北朝鮮の軍事施設、造船所や軍人家族の女たち。配給だけに頼ってついに餓死者がでるほどの困窮した状態から、脱北を決意したひとたちである。ことに、結婚していても夫に先立たれ(実は北朝鮮では夫が事故死や投獄が多い)、配給が無くなり、一家が苦境におちいったケース。そのなかに未婚の娘も大勢いる。
北の女性がなぜ、越境した中国の農村で迎えられたかはさらに深刻なわけがあった。1979年に中国政府が導入した”一人っ子政策”が進み、女子が男子に比べ3000万人も少ないという歪んだ人口構成が生まれた。農家の子どもは後継ぎの男ひとりしかいなかったのだ。
20代、30才前半までなら、嫁入りがかなったのである。だが、聞く話によると、タチの悪いブローカーにつかまると、強姦されたあげく、漢民族相手の娼婦として売り飛ばされる。わずか身体を1日ぶんの食料にも満たない値で売られるひともいた。
この人身売買は地元の中国でも問題になり、中国人のモラルあるひとたちは彼女たちを助けようとした。なぜなら、ブローカーの言うことを聞かなければ、中国当局に密告され強制送還されるので、どんなに酷い仕打ちを受けても聞かざるを得ない弱い立場にある。
北朝鮮で生まれ育った世代は、識字率は100%といっていいほど初等教育は受ける。しかし、高等教育にいたっては1985年以降から悪化している国内経済の影響から受けられないひとが多い。さらに世界の情報からまったく”隔絶された異質な空間”に生きてきたのだ。
それがどれほどすさまじいものか、最初は脱北者からの話を聞いてもそのまま信じれる状況ではなかった。まず、韓国について。
「まちは貧しくコッチョビ(浮浪者)があふれている。それに比べわが国はなんと恵まれていることか」というのは、北が教え込んだ宣伝文句だったとは-。韓国にやってきた北のひとたちは、中国よりさらに進んでいた韓国の首都ソウルと経済力、IT技術に驚愕し、自分の国がどれほどの嘘をついていたかを知ることになった。
それは隠し通せないほどの貧富の差だった。脱北者はまず、ハナ院という韓国での生活に適応できるよう、教育施設に入ることになる。しかし、それは地下鉄の乗り方とか、韓国の習慣、パソコンなど職業訓練など、いわゆる生きて行くために必要な知識を得るためにすぎない。そして、韓国定住資金として、約350万円の現金が支給される。いわば、文字通り地獄から天国へ行くほどの開きがあったのだ。
1996年ごろから脱北者たちは増えはじめ、年々増え続けている。平均すると年500人程度。これはあくまでも脱出に成功したひとの数でおそらくその2倍のひとが北朝鮮に送り返されている。初犯の場合、労働鍛錬隊コパックに入れられ、昼間は労働に駆りだされる。ここには中国から収監された者のほか、職場放棄した者が思想再教育を受ける場のようだ。期間は1カ月。
しかし、もっと重い刑(主に男性)は牢獄に2カ月間収監され、その間に与えられる食事はトオモロコシ30粒が入ったオモ湯だけ。これが日に3回。当然、栄養失調になり、やがては深刻な飢餓状態におちいる。そして、体力が衰えた者から次々に死んでゆく。生存率は50%という。
中朝の密輸業者から、北のひとたちは「犬でも白めしをたらふく食っている」という話を聞き、それが本当ならわれわれよりはるかに豊かなのだと眉唾ながら思ったそうだ。
1996年からの大飢饉により、軍人たちも家に帰るよう指示される。国家財政もひっぱくし、軍に配給さえなくなった。当然、工場従業員も解雇され、特権者層を除いて、生活する手段を失ってしまう。
最初は家財道具を食料に換えたり、着物や装飾品や骨董品などを闇位置で売り、とうもろこしなど食料を手に入れていた。それも1年が限度である。そのころはまだ鉄道、バスは走っていたがやがてはバスさえも走らなくなった。ひとびとは数人で車を用立て、何人かで闇市場へ、食料を求めて旅するようになる。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)での警察内部の情報によると、「保安員(警官)は本来、国から充分な配給をもらえることになっている。国の規定では、コメ7割に雑穀3割を混ぜた配給がもらえるはずだが、規定どおりにもらえた試しがない」と語る。
配給は、半年分を一度に受け取るが、コメではなくトウモロコシの粉だ。それも、運搬過程で横流しされ、手元に届く時には、3分の2に減少。さらに、半年分を受け取ったところで、長く保管できない。
そこで、保安員(警察官)は違法とわかっていても、もらった配給のほとんどを市場に横流しする。しかし、市内の他の保安員も同時に受け取り、同時に横流しするため、安値で買い叩かれる。そして、収入も食糧もない保安員の家族は、たちまち飢えに苦しむ羽目になる。実は咸鏡北道には3000人を超す最大規模の収容所が2つも確認されている。
この収容人数は尋常ではない。
どこで食料が出回っているか闇市場の情報を仕入れると、一家の主が親戚や知人から売れるものを集め、雑穀を背負って帰ってくるのを家族は待っているのだった。しかし、買出しのひとも行き倒れたり、収監されるようになった。
理由は軍人たちも飢え始めており、雑穀袋を背負った一家の主から力ずくで、食料を奪う。なかに軍人と争ってそのまま収監されるひとが出始める。食料を手に入れる手立てを失ったひとたちはこのまま餓死するよりは、もっと北へ逃れた方が生きのびるチャンスがあると考えるようになった。
灰色のモノローグ
私(女)が脱北を決意したのは98年。軍隊にいた弟が基地から逃亡した。弟が帰ってきたら逮捕しようと軍警察が家に張り込んでいた。病気で衰弱した父は私を呼んで耳打ちした。「弟を見つけて一緒に逃げろ」
寝たきりでただ死を待つ父を残し、私は家を出た。父がどこに埋葬されたか今も知らない。
弟と合流した私は、中国との国境を流れる豆満江を渡った。ブローカーは弟を助けるにはカネが要ると言い、私は中国人男性に5000元(約8万円)で売られることになった。その後弟とは一度も会っていない。
他の脱北妻と同様、私の結婚生活も惨めなものだった。脱北妻は奴隷のように働かされ、性欲のはけ口にされる。けがをした妻や夫に飽きられた妻は別の男に「転売」されることもある。
当局の目を恐れる脱北妻は、どんなにひどい目に遭っても助けを求められない。売春を強要されるリスクは常に付いて回る。妊娠すれば中絶しろと言われ、私のように中絶を拒否した場合、地元の病院での出産は望めない。生まれた子供は無国籍者となり、教育も医療も受けられない。
中国で性奴隷にされる脱北女性
Surviving Human Trafficking in China
2016年8月26日
パク・ジヒョンさん(人権活動家、人身売買被害者)
野放しの闇ビジネス
私のいた村には脱北妻が5人いたが、道で擦れ違っても声を掛け合うことはなかった。近所の人たちの目が怖いからだ。「所有者」の男たちは、私たちが共謀して逃げるのを警戒していた。逃亡を防ぐために、私たちには冬でもまともな靴は与えられなかった。
私は中国人男性の奴隷として6年間過ごした後、2004年に中国当局に見つかり、他の数人の脱北女性と共に国境地帯の図們の収容所に送られた。最初の1週間は毎日5~7人の男の看守が部屋に入ってきて、私たちを全裸にさせ、肛門や膣に現金を隠していないか調べた。生理中の女性を調べるときには、看守の脚に血が流れたが、彼らはお構いなしだった。看守はトイレにまで付いてきた。
(出典 連座制で強制収容所送り、北朝鮮「収容所人名辞典」が暴く地獄)
北朝鮮に送還され、半年ほど収監されて強制労働に駆り出された。脚に壊疽(えそ)が起き、死期が近いと診断されて、収容所から放り出された。家もなければ、頼れる身内もいない。私は路上で物乞いをした。あるとき通り掛かりの医師が哀れに思ってこっそり脚を治療してくれた。
私の物語はそれで終わりではない。息子を捜すために別のブローカーの手引きで再び中国に向かった。07年に北京で出会った韓国系アメリカ人の牧師の助けで、私たち親子はイギリスに渡って難民認定を受けた。私は生まれて初めて自由を知った。
人身売買は国際法で禁止されており、中国でも違法だ。だが、闇のビジネスは野放し状態。
祖国の悲惨な生活から逃れようとして人身売買の餌食になり、性奴隷にされる女性たち。世界がその実態に目を向けなければ、彼女たちは抵抗するすべもない。
彼女が旅した極限の1万km
麗しのピョンヤン物語
&北朝鮮アセンディング
ジョン・ナッシュ博士のTheory of Gameで紐解く
仮想敵国ゲームの真実
男たちは世の女性から失われた「しとやかな女性」のイメージを北朝鮮の美女軍団に重ね合わせた。韓流ドラマの「チュッケッタ!(死にそう)」「ミチョ!(気が変になりそう!)」とオーバーに泣き叫ぶ韓国女性と違い、すぐ「死んだり」「気が変になったり」しない北朝鮮の美女軍団に「理想の朝鮮女性」を追い求めたのかもしれない。額に汗を滲ませながら、一糸乱れぬ歌と踊りを披露する美女軍団の真摯な姿と太陽のような微笑み、、。健気であるだけにあまりにも切な過ぎる、すべての階層の北の女たちに迫った運命を追った。
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第Ⅰ部 麗しのピョンヤン物語
1 結界がはられた異質な世界
2 性奴隷マーケットの値段 女たちの命を賭けた脱出
3 国際列車で北京 モンゴル モスクワの旅
4 うるわしの首都ピョンヤンが縮んでいる
5 北朝鮮アセンディングの舞台裏
7 サザエでわかった女性挺身隊の脱北阻止と外貨稼ぎ
第Ⅱ部 北アフリカから地中海を渡る
太陽を背にして
第Ⅲ部 ナッシュ博士のゲーム理論
時間経過とともに不利になる
第Ⅳ部 悪魔の辞典
成分がいい、悪い!
拡張される刑務所 壮大なるスケール
暗殺映画「interview」の真相
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