パキスタン、ネパール、ミャンマーの3カ国は、中国が計画していた大規模水力発電所3カ所の事業中止を発表した。これは総額200億ドル(約2兆2500億円)規模の大型プロジェクトだ。
パキスタンはインダス川流域のディアメル・バハシャダム建設に中国が提供を申し出ていた資金140億ドル(約1兆5754億円)の受け入れを拒否。ネパールは25億ドル(約2813億円)規模の水力発電事業について、合弁相手の中国企業が「重大な財務違反を犯した」として事業取り消しを決定。ミャンマーも「大型水力発電所には関心がない」と表明した。
専門家は「今回中止された三つの案件は、それぞれ背景や原因が異なる。しかし、周辺の発展途上国は中国に大型インフラ事業を引き渡す代償は大きいと気付いたのだろう」と指摘。
「中国の『一帯一路』構想は、周辺国に長期的な植民地戦略ととらえ始められている」。
そして、中国は切り札を切ってきた。
地元メディアによると、習氏はネパールの開発プロジェクトなどに2年間で560億ネパールルピー(約530億円)を拠出する方針を表明した。
中国の国家主席として23年ぶりにネパールを訪れ、バンダリ大統領と会談。双方は「両国の発展と繁栄に向けた代々友好の」戦略的協力パートナーシップを構築することで合意した。
ネパールには亡命チベット人約2万人が住むが、中国の要請で当局は国内の反中デモを弾圧し、チベット自治区から山岳地帯を越える亡命も規制。オリ首相は習氏に「ネパールでの反中・分裂活動は決して許さない」と述べた。
一帯一路
中国とラオスを結ぶ全長414キロの鉄道の建設も進んでいる。これまでに131億3000万元(約2170億円)が投資され、すでに12のトンネルが開通している。
また、中国南西部の雲南省(Yunnan)からラオスを通過しタイの港湾までをつなげる鉄道計画もある。完成すれば、雲南省は、中国製品が東南アジアに輸出される際の貿易ハブとなると期待されている。
アフリカでは、ケニアの首都ナイロビとインド洋に面するケニア最大の港湾都市モンバサ(Mombasa)とが鉄道でつながっている。
■道路と港湾
ラオスのダム決壊の教訓は生かされなかった。
誰か特集を打ってくれないか!
中国の真の狙いについては、世界での影響力を拡大することではないかとか、一帯一路に参加すれば中国に依存することになりかねない、など懐疑的な見方も少なくない。現に一帯一路は現在、世界人口の3分の2をカバーし、同構想へのこれまでの投資総額は1兆ドルを超えたとみられる。