ReuterJapanNews’s Dialy

バンコク駐在記者。ヤンゴンからチン州ミンダットに転戦。国際NGOと連携して国軍の攻撃から逃れる難民を救おうと頑張っています。

ラオス メコン河の怒り ダムが人々を苦しめる 

 

ラオス南東部アッタプー県

7月23日に起きた建設中の水力発電用ダムの決壊では、数千人が家を失った。死者や行方不明者は政府の当初発表を大幅に上回り1000人以上になる。

本誌の調査では大規模なダムが少なくても6基建設される。

ラオスは外貨獲得の重要な手段として、水力発電による電力の輸出を拡大してきた。

ラオスは国土の中心をメコン河が流れ、それを中心に漁業で生活するひとが実に多い。その漁獲量は人口1人当たりの淡水魚の漁獲量が世界で最も多い。

流域の村々で食べ物といえば、魚を指すほどだ。メコン川には知られているだけで500種以上の魚が生息し、干ばつのときも大洪水のときも、さらにはカンボジアポル・ポト政権下での大虐殺時代にも、何百万もの人々の生活を支えてきた。

 

 

 

知らされていないダム建設の末路

 

だが困ったことに、ラオスの人々はダム建設による漁業で壊滅的になることを知らされていない。

これまでダムがなかったメコン川本流の下流部もせき止められることになる。そうなれば魚の繁殖が阻害され、漁獲量が減って、流域の6000万人が影響を受けると推定されている。

 

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犠牲をなぜ少なめに

 ラオス政府27日夜になって突然、「1千人あまりと連絡がとれていない」と表明した。一方で地元アッタプー県知事は28日、「遺体が確認できた死者は7人だけだった」と説明した。

 地元メディアは発生当初、約6千人に被害が及んだと伝えた。30日時点で死者数は11人とされているが、国際NGOや欧米メディアは「犠牲者を過少に発表しているのではないか」と疑問視する。

 ベトナム、中国、韓国からの救助隊が協力しているが人手が足りず、十分な捜索ができていないのが実情だという。ラオスの災害対策担当者は「今後、多くの遺体が一気に見つかる可能性もある」と話す。

 アッタプー県南部サナムサイの中心部にある中学校に設けられた避難所には、8メートル四方ほどの教室に、被災地のタヒン村から逃れてきた40~50人が寝泊まりしている。被災者の代表ソムチャン・サヤナさん(39)は「村人920人のうち、200人の行方が分かっていない」と、目を真っ赤にしながら話した。ダムが決壊してから、ほとんど眠れていないという。避難所を巡回する医師は「多くの人がショックと疲れを訴えている」と語る。

 県の担当者によると、被害を受けた村人の多くはダム近くの避難所にとどまるが、道が冠水していて物資は十分に届いていない。「サナムサイ中心部の避難所に少しずつ移動してもらう予定だが、全てを収容できるか分からない」と担当者はため息をついた。

 

 

 

 

 

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ラオス南部で建設中だった水力発電用ダムが決壊した事故は、行方不明者の捜索活動が難航しており、同国のエネルギー・鉱業相は、ずさんな工事が事故の原因だった可能性があるとの見方を示した。

 ダムは23日に決壊。現場が近づきにくい場所にあり、ラオス当局があまり公式な発表に前向きでないことなどから、正確な死者・行方不明者の数はいまだに分かっていない。当局は当初、死者数を27人と明らかにしたが、捜索活動の責任者は28日、8人が死亡、123人が行方不明になっていると発表。一方、27日にはアッタプー(Attapeu)県の幹部が報道陣に対し「1126人が発見できていない」と発言するなど、行方不明者に関する情報は錯綜している。

 また、12億ドル(約1300億円)の費用が投じられ、韓国、ラオス、タイの企業による合弁事業として建設されていたダムをめぐり、現地では建設基準に対する疑念も持ち上がっている。

 決壊の原因について、業者側はラオスで定期的に降るモンスーンの豪雨だと主張している一方、ラオス国営メディアおよびラジオ・フリー・アジア(Radio Free Asia、RFA)によると、同国のカンマニ・インティラート(Khammani Inthilath)エネルギー・鉱業相は決壊の原因がずさんな設計にあった可能性があるとの見方を示した。