ReuterJapanNews’s Dialy

バンコク駐在記者。ヤンゴンからチン州ミンダットに転戦。国際NGOと連携して国軍の攻撃から逃れる難民を救おうと頑張っています。

荒野の娼婦 ルーマニア 極限のおんなたち ウクライナ・シリーズ2

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「ジプシー!」

彼はそう言った。

この辺りにはたくさんのジプシーが住んでいるんだ。

彼はまだ何か言いたそうだ。

「あの娘たち、どう思う?」

どうって? なんで。

「女は好きか?」

そりゃ 好きですよ。

彼はニヤニヤしながらある仕草をした。
どうやら彼女たちは娼婦らしい。

娼婦
こんな真昼間に?
車がビュンビュン走っている道端で?

そう思っていると、彼が車を路肩に寄せた。

え?
ちょっと待ってくれ。


一体何を・・・

なんと彼はその場で値段の交渉を始めた。

いや、買春なんて日本でもやったことないのに、いきなり外国でやれというのか?
それにここは道路の真ん中。
一体どこでやるんだ?
車の中でか?

彼は言った。
「いや、俺はやらない。
あそこの草むらでやってこい。」

できるか!
こんな寒い中、外でなんて絶対に無理だ。

 

「病気の心配をしてるのか?
大丈夫だ。
彼女たちはコンドームを持ってる」

 

いや、そんな問題じゃないって。

彼女たちは笑顔を私に向けながら腰を振っている。
誘うように卑猥な舌づかいを見せつけてくる。

正直、体が反応してしまった。
頭の中をいろんな考えが駆け巡る。

彼女たちは若くて魅力的だ。
なんと、三人全員で私の相手をしてくれるという。
それで値段は1500円。

安い。
ほとんどタダ同然じゃないか。

思わず財布に手をやってしまった。


その瞬間、彼女たちの目つきが変わった。
獲物を狙う豹のそれだ。
素早く私の荷物を品定めしている。

そうだ、彼女たちはジプシーなのだ。
うかうかしてると身ぐるみ剥がされるぞ。

なぜ三人でサービスしてくれるのか?
一人が私の相手をしているうちに、財布を盗むつもりじゃないのか。

それに変だ。
近くには何もない。
山と草原が広がっている。
なのに彼女たちの車も自転車も見当たらない。
ここまでどうやって来たんだ?

もしかして私を車に乗せてくれたこの男もグルか?

私が荷物を残して車を降りた瞬間に、この男は私の荷物ごと走り去ってしまうかもしれない。

昂ぶっていた気持ちが急速に萎えていった。

やめておく。
彼にそう言うと、素直に車を発進させてくれた。

その後も何組もの娼婦を見かけた。
不思議なことに、みな三人組だ。

彼女たちのそばを通り過ぎるたびに、彼は笑いながら私の顔を見てくる。

「いいのか、ヤらなくて」
そう言いたいようだ。

頼むからこれ以上誘惑しないでくれ。
理性が吹き飛びそうだ。

これだけ頻繁にジプシーの娼婦が道端にいるのだから、
この辺りでは買春は普通のことなのだろう。
私が警戒しすぎなのだ。

西ヨーロッパと中欧とはかなり毛色が違う。
なかなか刺激的だ。


車は郊外を抜けて都市部へと入って行く。
もうジプシーの娼婦の姿は見えない。

だんだんと暗くなってきた。
もうすぐ日が暮れる。
なんとなく不安な気持ちになってくる。

車を運転しているモルドヴァ人の男とは、相変わらずコミュニケーションがとれない。
何度か会話を試みたが全て失敗に終わった。

彼はカセットテープを一本しか持っていないらしく、さっきから同じ曲が何度もループしている。
もうフレーズも覚えてしまった。

退屈したのか、男は携帯電話で会話をし始めた。
だが、すぐに切る。

しばらくするとまた電話で会話をする。
またすぐに切る。

何をしているんだろう。
まさか仲間と連絡を取って、私を拉致しようとしてるんじゃないだろうな。

いったん不安になると、思考がマイナスの方向にどんどん進んでいってしまう。

ここは街中だ。
滅多なことはできないだろう。
そう思うしかない。

ブラショフの市内で車は急に止まった。
男は誰かを探しているようだ。
いよいよ仲間が乗り込んでくるのか。
もしもに備えて身構えた。

後部座席のドアが開かれた。
外には若い男女が立っている。
何か言っているが私にはわからない。

男が彼らを追っ払った。
彼らもヒッチハイカーらしい。
見ると、街角のそこら中にヒッチハイカーらしき人間が大勢立っている。
みんな大きな荷物は持っていない。
市内を移動するにもヒッチハイク
それがこの国のカルチャーなのだろうか。

男にブラショフの地図を見せて、今どこにいるのか聞いた。
知らないという。

そんなばかな!

じゃあ ここに車を止めて、君は一体何をしているんだい?

男は肩をすくめる仕草をした。

ダメだこりゃ。


通りかかった女性を捕まえて聞いてみた。
英語がわからないらしい。

今度はもっと若い女性に聞いてみた。
市内へ向かうバス停まで一緒に来てくれるという。
おお!
なんて親切なんだ。

ヒッチハイクさせてくれた男に別れを告げる。
ガソリン代として少しお金を渡した。
驚いている。

最後までよくわからない男だったが、どうやら悪い人ではなかったようだ。
疑ってゴメン。

バス停までついて来てくれた女性は、降りる場所を丁寧に教えてくれた。
しかもバスのチケットまでくれた。
私がお金を差し出しても受け取ろうとしない。
これがルーマニア人気質なのか。

 

 

 

 

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上記記事はこの本の抜粋です。R18作品に分類されています。

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