ReuterJapanNews’s Dialy

バンコク駐在記者。ヤンゴンからチン州ミンダットに転戦。国際NGOと連携して国軍の攻撃から逃れる難民を救おうと頑張っています。

プノンペン 17才の見請け 500ドルで永遠の幸せは買えた? 連載2

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17才の身請け

500ドルで永遠の幸せは買えるの?

 

 

1998年ごろ。幻の国に行くこと3度目にして、置屋から女の子を身請けしました。

わかる人にはわかるスワイパー十字路にある喫茶店から斜め前にある置屋

そこで買った女の子をホテルにつれて帰るなり「500ドルくれたらずっと 一緒にいられる」と耳元でささやくのです。貧乏旅行者にとって 500ドルは大金、無視していました。あきらめたのか数日後には言わなくなりました。

しかし「たった5万円ちょっとのためにこの子は売られてきたのか」と悲しくなりました。

 

 

カンボジア出国の日、とうとう別れる時にポロポロ泣きながら抱きついてきたときに 私の中の何かがはじけてしまいました。「たかが5万円じゃないか…」

 

バンコクに立ち戻りバンコク銀行に直行。

預金口座から500ドル相当のバーツを引き出し、 ドルに換えて、2週間ほどBKKで用事を済ませた後、フラフラとバンコク航空でプノンペンに 逆戻り、あの置屋に直行しました。

 

バイクの後ろから降りるか降りないかのうちに彼女が私を見つけて「キャーキャー」と 大騒ぎしながら飛びついてきました。私は前の別れ際に「もうこの国に来ることはな い」と 言っていたので、彼女もびっくりしたのでしょう。腕にグルグル巻きついてきて、 拉致されるように奥のサロンに連れていかれました。

 

ソファーに座っている間、私に巻きつくように抱きついている彼女を見て、チーママは 呆れたように笑っていました。とりあえず私は1泊分の20ドルを払って彼女を定宿に 連れて帰りました。ここで「身請け」の交渉をする前に、2人だけで話をつけておきた かった からです。

 

宿に帰ってからおもむろに500ドルを渡しました。始めはなんだかわからないようで したが、 そのうちに大騒ぎになりました。その日はニコニコの彼女と一夜を過ごし、次の日、 ルンルン気分で彼女だけ置屋に帰りました。よく考えればお金を渡して返したことは とても危険な行為でしたが、チラッと思っただけで信じることにしました。 「騙されたのなら、それでもいいか」と自分でもあっさりでした。実際、ベトナム人に お金を渡して、一緒に旅行中に一服盛られて、国境近くの草むらで目を覚ました 日本人の話も聞いていましたから…

 

しばらくして部屋がノックされたとき、「帰ってきた!」とドアを開けると、そこには 同じ置屋の違う女の子が立っていました。「私覚えてる?」と。何のことかわからな いまま 部屋に招き入れると「一緒に置屋まで来てくれ」という。なんだかママさんと彼女が もめているらしい。ちなみに「覚えてる?」の彼女はあの置屋で英語が話せる数少ない 女の子で「生尺・口内発射・ごっくん」をオファーしてきた子でした。断ったけど…

 

バイク3ケツで戻ってみると、彼女とママさんがベトナム語で大喧嘩していました。 「500ドルならお前はベトナムに帰るだけで、この男(私です)と一緒に旅行したり 一緒にベトナムに行くことは出来ない」とママさんが言うのです。

 

彼女は「この前の Aちゃんは500ドルで男と一緒にベトナムに帰った」と負けずに怒鳴っていました。 ママさんは「一緒に居たければ、あと500ドル、合計1000ドルだ」と言い出し、 彼女は「だめよ、払っちゃ、ボッてるんだから」と私に大声で言うのです。

 

私は彼女をこの置屋から出してあげたかっただけなので、500ドルで彼女がベトナ ムの 家に帰れるのなら、それでもいいと思っていましたが、彼女のほうが「一緒にベトナ ムに 帰るんだ!」と駄々をこねるので、「1000ドル払ってもいい」と言うと、ママさ んは ニコニコして態度が変わり、彼女は「払っちゃだめよ、絶対!」と怒ったのですが、 どう考えてもこの場はママさんが強いので払いました。

「10万円で17歳の彼女の 将来が自由になるのなら安いものだ。」と日本人の金銭感覚に戻っていました。

 

彼女は2階から自分の大きなスーツケースを持ってくると、一緒に宿に帰りました。 その日は彼女、私が500ドル余分に払ったことがよほど悔しかったらしく、 「あのまま粘れば500ドルで済んだのに馬鹿ね!」と1日中不機嫌でした。 でもあの場ではママさんのペースで話が進んでいたので無理でしょう。

 

さて重大な問題が持ち上がりました。彼女(ら)はパスポートを持っていないのです。 ということは私と一緒に「正規の国境」を越えてベトナムには行けないのです。 彼女らは「パスポート」というものの存在さえよく知らないのです。

 

彼女らはベトナムから連れてこられるとき、メコンデルタの街、チャウドック近辺の ベトナム人専用の国境で警官に賄賂を払って入国してきているということです。 正規の身分証明書を持っている人は賄賂なしで短期出入国できるそうですが、 彼女らはそんなもの持っていません。戸籍さえない子も多いのです。 外国人(我々)はこの国境からは正規のビザを持っていても出入国はできません。 陸路では「モクバイ」だけです。

 

結局は置屋の手配する「運び屋」に頼んで、来たルートを戻るしかないのです。 彼女らの出入国に関する知識は皆無です。「通行料」さえ払えば、だれでも 行き来できると思っていました。彼女らの「運賃」は50ドル、賄賂込みです。 日本人は100ドルということでした。もちろん片道でバイク2ケツです。

 

それは私には出来ない相談でした。闇越えでは幻の国の出国印がなく、ベトナムの 入国印がないことになります。彼女をベトナムの家に帰した後、正規のルートで 出国することは出来ず、置屋の契約運転手で幻の国に帰るにしても、帰るころには 幻の国のビザは切れています。それに何より、ベトナム人が言う「大丈夫、問題ない」 という言葉は信用できません。国境でお金を取られて「御用」というならまだしも、「メコン川、うつ伏せで漂流」じゃ、洒落になりません。

 

なんとか彼女を説得し、「私はモクバイからしか入国できないから、後で家に行く」 ということでその場を収めて、ベトナムビザが下りるまでの約10日間を一緒に過ごしました。その間、彼女はセントラルマーケットで弟・妹たちのお土産として子供用の服と自分の洋服用布地を買い込んでいました。

 

彼女がベトナムに帰る前日になって「やっぱり一緒じゃないと帰らない!」と 駄々をこねだしました。

理由は「ここで別れたら二度と会えないかもしれない」ということと、「私が他の女と寝るかもしれない」という理由でした。なんともはや…

「ごちゃごちゃ言うと俺はベトナムに行かないぞ!」とおどしてなんとかおさまりま した。

 

バイタク代50ドルを払ってくれるように彼女は私に甘えてきましたが、私が冗談で 50ドルを渡し、「じゃ、俺はベトナムには行けないぞ、これは俺の交通費なんだから」と言うと、彼女はまじめに怒り出して、50ドル札を投げ返してきました。

「冗談だよ」といって渡しても、頑として受け取りませんでした。その晩は例の置屋に 1泊しました。彼女の出発は朝4時、まだ暗いので市内の移動は自殺行為だからです。

 

置屋の宿泊料は15ドル、エアコン料が5ドル、はっきり言ってボッタクリですが どうしようもなく払いました。彼女は何でもお金のママさんにご機嫌斜めです。

 

多くの日本人は太陽があるうちにスワイパーから帰ってしまいますが、夜のあそこは 様子が一変します。ローカルのお客で通りはあふれ返り、昼間はのどかで閑散とした 目抜き通りはピンクの照明であふれ、音楽が流れ、道路いっぱいに屋台食堂が開店し ます。

 

置屋では客が食堂から出前をとり、女の子を膝の上に乗せて宴会を始め、大騒ぎです。 この国の夜は早いのですが、ここだけは12時過までとてもにぎやかでした。

 

置屋の女の子は朝早くママさんに文字通りたたき起こされて、掃除・洗濯をはじめま す。午後はテレビをず~っと見ているだけです。ご飯は自費で、自分で食堂から買ってき ます。

 

女の子はお客が来ると必ずホテルに誘います。それは「H」がしたいからではないのです。 置屋にいると1日に5回も6回も「H」をすることになるけど、お客とホテルに行けば 運がよければ0回(涙)、頑張っても3回で済むかららしいのです。クーラー目当て かとも 思いましたが、もともとベトナムも暑いので、クーラーをつけると寒がります。

 

次の日、彼女は朝4時にバイクに乗ってベトナムに帰り、私は定宿に帰りました。 その後、私はモクバイ経由でベトナムに入り、苦労してメコンデルタ奥地の水道もない 小さな小さな村に自力でたどり着いて、彼女の母親の家に転がり込みました。2ヶ月 の間、 家賃はもとより、食費も何も請求されることはなく、弟や妹達がお小遣いを ねだるぐらいでした。それでもお小遣いや食費は渡していましたが… 彼女の父親の面会で刑務所にも行きました。ベトナムの刑務所に面会に行った 日本人旅行者もあまりいないでしょう。

 

「戻ってくるでしょ?」と何度も何度も言われ続けた最後の1週間、あいまいな返事 を続けながら、私は「2度と会うことはないだろうな」という思いを胸に彼女と別れました。

 

彼女は前から「バイバイ」という言葉を嫌っていました。彼女にとってその言葉は 「永遠の別れ」を意味する言葉だったので、日本や欧州のようなつもりで、ちょっと した 外出で「バイバイ」と私が軽く言うと本気で怒り出したものでした。しかし彼女は 私のサイゴン行きのバスが発車するときに泣きそうな声で小さく言ったのです、 「バイバイ」と。

 

彼女は私が2度と戻らないことを感じていたのでしょう。

いまでも別れ際の彼女の「バイバイ」という声は焼き付いて離れません。

 

 

 

 

 

 

------------------------ contents ------------------------

序章

プノンペン 

           愛と身請け&恋愛移住事情

第1部

        話しはタイのジュライホテル    

第2部 身請け

           スワイパーで500ドルで

          

 

第3部

LONLY PLANET&歩き方では行けない世界へようこそ!

         キャピトルで朝食を

第4部

           プノンペン移住はあり?

    タバコは安い、尾根遺産も40ドル

第5部

  恋愛深煎り編 恋は命がけ 

         トンレサップの雨雲

第6部

       ボランティアの境界線 2人の日本女性

      見る人により異なる世界

第7部

      平均年齢24才の歪んだ世界

       

------------------------ PHNOMPHEN ------------------------

 

 

 

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幻の国での「身請け」

ひょんな事から幻の国の幻の村でベトナム娘を身請けしてしまい、村じゅうの 店で「あいつだ」と指差され非常に肩身の狭い思いをしてる亞洲浪人です。小生の 「身請け」で得た教訓を投稿させていただきますので、当地で「身請け」を検討され てる方、参考(反面教材?)にして下さい。

 

①身請けの仕組み

幻の村スワィパ-の置屋で働いている女の子(皆ベトナムの南部メコンデルタ出身) は皆、400~600US$位の借金を背負って来ています。そして毎回客を取る事に半分は 店の取り分、半分は借金返済に充てられる仕組みになっています。(70ストリートの 場合借金額は低いものの、もっと悲惨な境遇らしい)

 

ですから女の子の借金を肩代わりした上、店に「足抜け金」(次の新人を連れてくる手数料、金額は女の子の店での重要度とボスの気分によって変わる)を払えば即日置 屋から解放されます。これが身請けです。

 

 

 

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